目次
1. 牛乳200mlあたりの栄養成分
スーパーで売られている牛乳は、紙パックで1Lの商品をよく見かけると思いますが、小さいパックで100-200mlの商品もあります。宅配サービスや、少し前までは給食でもビンに入った牛乳を飲まれていた方もいるでしょうか。給食牛乳は200mlの種類が多く、また農林水産省の「食事バランスガイド」では1日の目安(基本)として乳製品は牛乳瓶1本分(200g)とされています。そのためここでは1日の牛乳摂取量の目安200ml当たりの栄養成分を見ていきます。
1-1. カロリー
牛乳200mlあたりのカロリーについてです。
1-1-1. エネルギーは126kcal
牛乳200mlあたりのエネルギーは126kcalです。1日のエネルギー量の目安は、成人女性の場合は1400~2000kcal、男性は2200±200kcal程度です(活動量の低い場合)。摂取エネルギーを2000kcalとすると、そのうち126kcalの割合は6.3%になります。
1-2. カルシウム
牛乳200mlあたりのカルシウムについてです。
1-2-1. カルシウムは227mg
牛乳200mlあたりのカルシウムは227mgです。「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、1日当たりのカルシウム推奨量を、男性700~800mg、女性650mgとされています。牛乳200mlで推奨量のおよそ3分の1を摂ることができます。
1-3. 糖質
牛乳200mlあたりの糖質についてです。
1-3-1. 糖質は9.9g
牛乳200mlあたりの糖質は9.9gです。炭水化物9.9gのうち食物繊維が0gであるため、全て糖質となります。同じ量のごはん200gの糖質71.2gと比べて低糖質ではありますが、摂りすぎると糖質も多くなるため注意が必要です。1日の炭水化物の目標量は、摂取エネルギーに対して65%ですが、糖質については明確な基準がありません。
食・楽・健康協会の推奨するロカボとは、1食の糖質量を20~40gに抑え適正糖質を摂取するというものです。
1日に摂取する糖質を120gとすると、牛乳200mlあたり9.9gの糖質は約8%になります。
1-3-2. 牛乳は低GI値(20~29)
牛乳のGI値は20~29とされています。GI値とは食後血糖値の上昇しやすさを数値にしたもので、GI値が高いほど糖質が吸収されやすく、食後血糖値が上昇しやすい食品になります。70以上が高GI食品、55以下が低GI食品とされており、GI値20~29の牛乳は、糖質がゆっくりと吸収される低GI値食品とされています。
1-4. 脂質
牛乳200mlあたりの脂質についてです。
1-4-1. 脂質は7.8g
牛乳200mlあたりの脂質は7.8gです。1日の脂質の目標量は、年代や性別によって変わりますが、摂取エネルギーの20~30%とされています。摂取エネルギーの20%とすると、1日に2,000kcal摂取する場合、脂質は約44gです(脂質1gあたり9kcalとして算出)。そのうち7.8gは17.7%程度になります。
1-5. タンパク質
牛乳200mlあたりのタンパク質についてです。
1-5-1. タンパク質は6.8g
牛乳200mlあたりのタンパク質は6.8gです。1日のタンパク質の目標量は、摂取カロリーに対して13~20%とされています。18~64歳では男性65g、女性50gがタンパク質の推奨量です。65gのうち6.8gは10.5%程度になります。
1-6. ビタミン
牛乳200mlあたりのビタミンについてです。
1-6-1. ビタミンB2、B12は推奨量の約1/4
牛乳200mlあたりのビタミンB2は0.31mg、ビタミンB12は0.6μgです。これらのビタミンB群はエネルギー代謝・赤血球の生成に関わり、食事摂取基準はそれぞれビタミンB2が0.9~1.4mg、ビタミンB12が1.0~1.6mgです。これらはそれぞれ基準の約1/4~1/3にあたります。
パントテン酸は1.14mgです。パントテン酸は体の中で、糖や脂肪酸代謝の酵素反応に関わるビタミンの一つです。パントテン酸の食事摂取基準は1日4~5mgで、1.14mgは基準の約3割になります。
2. 牛乳の健康効果
牛乳の栄養成分について紹介しました。次に、牛乳の栄養効果についてお伝えします。
2-1. 骨や歯を強くする
牛乳に含まれるタンパク質やカルシウムは、骨や歯を強くします。
2-1-1. 骨粗しょう症の予防
骨粗しょう症の予防が期待できます。
牛乳を飲むことで、骨密度低下のリスクを下げるという調査結果があります。この調査では、牛乳の摂取の他にも、適切な運動量や栄養素摂取が骨密度低下を防ぐという結果が出ています。骨を強くするには、牛乳を飲むことに加えて運動習慣・ビタミンDの摂取・日光にあたるなどを意識すると良いでしょう。
参考:高校生の骨密度に対する栄養素摂取量および生活習慣の関連
2-1-2. 虫歯予防効果がある
牛乳には、歯の再石灰化やプラークを付きにくくする効果があります。牛乳を飲むことによって、虫歯予防が期待できます。
2-2. 良質なタンパク質が摂れる
牛乳に含まれるタンパク質は必須アミノ酸である10種類のうちトリプトファン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、ヒスチジンの9種類が含まれています。必須アミノ酸とは人間の体内で作ることができない成分で、必須アミノ酸を多く含むほどアミノ酸スコアが高いため、栄養価の高い効率よく栄養が取れる食品とされます。
2-3. メタボリックシンドロームの予防
牛乳を飲むことはメタボリックシンドロームの予防になるという調査結果があります。牛乳・乳製品の摂取量が多いほど、メタボリックシンドロームのリスクが有意に減少することが確認されています。
2-4. 血糖値の上昇を抑える
牛乳は低GI値食品のため糖の吸収を穏やかにします。米と一緒に摂取することで、食後血糖値の上昇を抑えるという研究結果もあり、糖尿病予防につながる食品でもあります。
2-5. 高血圧を予防する
牛乳・乳製品の摂取は血圧を低下させる効果があります。乳製品には血圧低下作用のある成分が含まれていて、乳製品の摂取量が多いと血圧が低い傾向があると報告されています。
コラム. お腹が痛くなるのは「カゼイン」の吸収ができない可能性も
牛乳は消化吸収ができないと聞いたことはありませんか? 牛乳を飲むとおなかが痛くてごろごろするという人には、乳糖(カゼイン)の消化酵素が少なく、牛乳を消化できていない可能性があります。これは「乳糖不耐症」という体質のためです。大人になってから乳糖不耐症になることもあり、温めて飲むことや、少しずつ飲むことで症状が出にくくなることもあります。乳糖不耐症は牛乳アレルギーとは違い体質ですが、乳糖を含む食品を控えた方が良いでしょう。
3. 牛乳は5種類ある
牛乳は加工の仕方によって、「牛乳(成分無調整牛乳)」「特別牛乳」「成分調整牛乳」「低脂肪牛乳」「無脂肪牛乳」の5種類に分けられます。
3-1. 牛乳(成分無調整牛乳)
生乳を成分無調整のまま製造したものです。殺菌方法が決められています。学校給食でも成分無調整牛乳が提供され、牛乳と言えばこの種類という方も多いのではないでしょうか。
3-2. 特別牛乳
許可を受けた施設で製造した牛乳です。無殺菌の「生乳」で販売できる高い基準を満たしたもので、全国で4施設しか製造されていません。その4施設とは、①想いやりファーム(北海道)②雪印こどもの国牧場(神奈川県)③クローバー牧場(京都府)④白木牧場(福岡県)です。それぞれの施設と、提携されている販売店や通販で購入することができます。
3-3. 成分調整牛乳
生乳から乳脂肪分などの一部を除去・調整したものです。低脂肪牛乳・無脂肪牛乳と違い乳脂肪分の規定がなく、乳脂肪を追加し『特濃』『濃厚』と表示されているものも販売されています。
3-3-1. 無調整との違い
成分調整牛乳は脂肪分などが抑えられ、さっぱりとした味のものが多いです。無調整のものと比べて低カロリーで、ダイエット中の方にも人気です。価格も安く、手に取りやすい種類は成分調整牛乳です。
3-3-2. カルシウム入り牛乳
成分調整牛乳の中には特定の栄養素を多く配合した製品があり、カルシウムが多いカルシウム牛乳があります。効率よくカルシウムを摂取したい人におすすめの牛乳です。
3-4. 低脂肪牛乳
生乳から乳脂肪分の一部を除去し、乳脂肪分を0.5%以上1.5%以下にしたものです。
3-5. 無脂肪牛乳
生乳から乳脂肪分のほとんどを除去し、乳脂肪分を0.5%未満にしたものです。エネルギーや脂質を控えたい方は、「低脂肪牛乳」や「低脂肪乳」がおすすめです。
コラム. 豆乳と牛乳の違い
豆乳は大豆(だいず)を乳加工したものです。栄養価は豆乳の方が低カロリーかつ低脂質です。カルシウムは牛乳に比べて少ないですが(豆乳200mlあたり30mg)、大豆イソフラボンや鉄分といった、女性に嬉しい成分も多く入っています。脂質を抑えてカルシウムは他で補いたいという方には豆乳の方が良いかもしれませんね。
4. 牛乳の栄養成分を効率よく摂取する飲み方
牛乳は飲み方によって、栄養を効率よく摂る方法があります。
4-1. ビタミンDを一緒に摂る
効率よくカルシウムを吸収するには、ビタミンDを一緒に摂ることが必要です。
4-1-1. カルシウムは吸収されにくい
牛乳はカルシウムが多く含まれる食品ですが、カルシウムは吸収率が低く身体に吸収されるのは25〜30%程度です。ビタミンDは、カルシウム吸収を促進することが分かっています。
4-1-2. ビタミンDは動物性食品に多く含まれる
ビタミンDは魚・肉などの動物性食品や干物製品に特に多く含まれています。魚の干物には100gあたり50μg(まいわし・丸干し)干しシイタケには100gあたり12.7μg(乾しいたけ)入っています。
5. 牛乳の飲み方で注意したいこと
牛乳の栄養を効率よく吸収できる飲み方を紹介しましたが、反対に栄養を吸収しにくくする飲み方や、注意したいこともあります。
5-1. 加熱したら固まる
牛乳を加熱すると、うすい膜がはったり固体になったりしてしまうことがあります。うすい膜は牛乳のタンパク質が形を変えたもので、飲んでも大丈夫な成分です。しかし加熱して固体になってしまうのであれば、飲まない方が安心です。保存状態によっては賞味期限が切れていなくても、細菌が繁殖している可能性があるためです。加熱しない状態で分離している、普段と違うにおい・酸味や苦味がある、あたためると豆腐のように固体になる・分離するなどの状態であれば、腐敗していると考えられるため、飲むのは控えましょう。
またレンジなどで加熱しすぎると、沸騰して吹きこぼれてしまうことがあります。レンジで牛乳を加熱する際は、少しずつ温めると良いでしょう。
5-2. 不適切な保存
牛乳は他の飲み物よりも腐敗しやすいため注意です。開封後はできる限り常温を避けて、早めに使い切るようにしましょう。加熱しない状態で分離している、普段と違うにおい・酸味や苦味があるなどの状態であれば、腐敗していることが考えられるため、飲むのは控えましょう。
5-3. 薬を一緒に飲まないこと
牛乳と一緒に飲むことで、薬の成分が吸収低下・促進するものがあり注意が必要です。牛乳に影響を受ける薬を処方される際には、牛乳で飲まないように伝えられます。飲んでいる薬が牛乳と飲んでいいのかわからない時は、薬を服用してから2時間程度は牛乳を飲まないようにすると安心です。
5-4. リンを含む食品と一緒に飲まないこと
牛乳とリンを多く含む食品を一緒に摂取することで、カルシウムの吸収が低下します。
5-4-1. リンは加工食品に多く含まれる
リンはどの食品にも含まれますが、特に肉・魚類やナッツに多いです。タンパク質の多い食品にはリンが多い傾向があります。
また食品添加物として加工食品に多く含まれ、100gあたりにポテトチップスは100~140mg、チョコレートは210~240mgもリンが入っています。「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、1日当たりのリン摂取基準を、男性1,000mg、女性800mgとされています。チョコレート100gに含まれるリン210mgは、1日の摂取基準のうち20%以上を占めます。
5-4-2. リンはカルシウムの吸収を阻害する
リンはカルシウムと結合する性質があるため、リンを摂りすぎることはカルシウムの吸収を阻害することに繋がります。しかしリンを過剰に減らすと逆に、身体を作るのに必要な量が摂れないためバランス良く摂取することが必要です。カルシウムの吸収のためにリンを含む食品を過剰に減らす必要はありませんが、特に加工食品はリンが多く含まれます。牛乳と一緒に食べるものは、加工食品を控えめにすると良いでしょう。
6. 牛乳の栄養効果を高める摂取量
牛乳の栄養効果を高くするには、適切な摂取量を守ることが大事です。
6-1. 1日200mlが目安
農林水産省「食事バランスガイド」では、1日当たり乳・乳製品の目安を牛乳にすると約200mlになります。牛乳の栄養をしっかりと取り入れるためにも、毎日200mlを目安に続けましょう。また牛乳を飲むことだけではなく、バランスの取れた食生活を心がけることで、栄養成分の過不足が起こりにくくそれぞれの栄養効果を高めることにつながります。
7. 牛乳の過剰摂取によるデメリット
栄養価の高い牛乳ですが、飲みすぎることのデメリットもあります。
7-1. カロリーオーバーする
牛乳は栄養価が高く高エネルギーな食品です。目安量以上に飲んでしまうと、1日の摂取カロリーが多くなりすぎて肥満に繋がる可能性があります。
7-2. 脂質の摂りすぎになる
牛乳は脂質が多いため、飲みすぎると脂質の摂りすぎになる可能性があります。
8. 牛乳の栄養を摂取できる代用食品
牛乳からカルシウムなどの栄養素を摂りたいのに乳糖不耐症で牛乳が飲めないという方へ、代替食品を紹介します。
8-1. 乳糖を減らした乳飲料
牛乳を飲むとおなかがごろごろする方向けに、乳糖を減らした乳飲料があります。栄養成分は普通の牛乳とほとんど変わらないため、牛乳の代わりに飲むことができます。
8-2. 豆乳
豆乳にはおなかがごろごろする原因の乳糖が入っていません。豆乳の栄養は牛乳と比べて低カロリー・低脂質です。カルシウムは200mlあたり30mgで牛乳に比べて1/3程と少ないですが、タンパク質はほぼ同じ量含まれています。また大豆イソフラボン24.8mg/100gや鉄分1.2mg/100gと他の成分も多く入っています。乳糖が少しでも入っていない方が安心という方や、大豆の栄養をとりたい方には豆乳がおすすめです。
9. 牛乳の栄養を摂取できるサプリメント
牛乳の味が苦手で飲めないという方へ、牛乳の栄養が摂れるサプリメントを紹介します。
9-1. カルシウム
カルシウムを摂りたい方は、カルシウムのサプリメントをおすすめします。カルシウムと相性の良いビタミンDが入った商品もあります。
ミルクの雫 240粒 | 雪印メグミルクダイレクト
9-2. ラクトフェリン
牛乳に含まれるタンパク質「ラクトフェリン」をとることができるサプリメントがあります。ラクトフェリンとは、免疫力の向上に役立つ成分です。
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10. まとめ
牛乳の栄養と健康効果、栄養を効率よく摂取する方法についてお伝えしました。牛乳にはカルシウム、必須アミノ酸やビタミンなどの栄養素が多く含まれ、栄養価の高い食品です。牛乳には骨や歯を強くする他に、メタボリックシンドロームや糖尿病・高血圧などの生活習慣病予防の効果があり、さらに低GI値食品のため糖がゆっくり吸収されるという特徴があります。牛乳を飲むときの注意点としては、適切な保存方法を守ること、薬やリンを多く含む食品を一緒に摂らないようにすることです。さいごに乳糖不耐症で牛乳が飲めない方へ、代替食品と牛乳の栄養が摂れるサプリメントを紹介しました。
牛乳について知っていただけたでしょうか? 自分に合った牛乳を日々の健康にお役立てください。