1.りんごの栄養とリンゴポリフェノール
りんごを食べるにしても含まれている栄養はどんなものがあるのか気になる人がいるかと思うのでりんごの栄養について、そしてその健康効果の主な成分であるリンゴポリフェノールについて紹介します。
1-1. りんごの主要な栄養素の紹介
りんごに含まれる栄養素は以下のものがあります。
りんご(皮つき)100gあたりの含有量
エネルギー |
56kcal |
たんぱく質 |
0.2g |
脂質 |
0.3g |
炭水化物 |
16.2g |
灰分 |
0.2g |
カリウム |
120mg |
カルシウム |
4mg |
マグネシウム |
5mg |
リン |
12mg |
β-カロテン |
当量 27μg |
ビタミンC |
6mg |
食物繊維 |
1.9g(水溶性 0.5g、不溶性 1.4g) |
参照:りんご大学 りんごの栄養
含まれている栄養素の中では以下のような健康効果が期待できます。
1-1-1.カリウム
ナトリウム(塩分)を体外に排出し、血圧の上昇を防ぎます。
1-1-2.ビタミンC
体の酸化を防ぎ、鉄分の吸収を高めます。
1-1-3.食物繊維
食後のコレステロールの吸収や、血糖値の急激な上昇を抑える作用があります。
1-2. リンゴポリフェノールの役割と健康への影響
りんごの健康効果の主な要因であるといわれる、抗酸化力のあるポリフェノールが豊富に含まれています。また、リンゴポリフェノールの成分のうち約60%をプロシアニジンが占めています。
プロシアニジンとは、緑茶や赤ワインに含まれている「カテキン」や「レスベラトロール」よりも高い抗酸化力があるポリフェノールの一種です。
このリンゴポリフェノールには以下のような効果が期待できるといいわれています。
1-2-1.老化や病気から体を守る効果
リンゴポリフェノールは強い抗酸化力を持つため、体内の活性酸素を除去する効果があります。
本来、活性酸素は体内に入ってきたウイルスを攻撃し体を守る働きがあり、必要不可欠なものですが、紫外線やストレスの影響により体内に増えすぎてしまうことで、正常な細胞まで攻撃してしまい老化を促進させたり、疾病を招いたりしてしまいます。現代人は、多くのストレスを抱えており、それによって体内に活性酸素が増えすぎている状態にあります。
このような活性酸素から体を守る働きがあるのが、強い抗酸化力を持つリンゴポリフェノールです。リンゴポリフェノールは、体内に増えすぎた活性酸素を除去し、老化や疾病から守る効果があります。
1-2-2.血流を改善する効果
リンゴポリフェノールには、脂質の酸化を防ぐことで血流を改善する効果があります。
脂質が酸化すると、体内に悪玉(LDL)コレステロールが増え、血液をドロドロしたものに変えます。そのため動脈硬化などの生活習慣病につながる危険性があります。動脈硬化とは、増えすぎた悪玉(LDL)コレステロールが血管壁に付着し、血管が固くもろいものになることをいいます。
りんごポリフェノールには、その強い抗酸化力で脂質の酸化を防ぐため、血流を改善し、動脈硬化などの生活習慣病を予防する効果があるといえます。
1-2-3.口臭を予防する効果
口臭の主な原因は、メチルメルカプタンといわれる成分です。これが口内で増加することによって口臭が発生しますが、リンゴポリフェノールにはこのメチルメルカプタンの増加を半分以下に抑える働きがあります。また、虫歯菌が出す歯垢形成酵素の働きを阻害することも明らかとなっています。
このことから、リンゴポリフェノールには口臭を予防する効果があるといえます。
1-2-4.美白効果
りんごポリフェノールには、メラニン色素の過剰な生成を抑制する働きがあり、美しく白い肌へと導く効果があります。また、最近ではスキンケア商品にも配合されるようになっており、紫外線をカットする働きがあることも確認されています。
1-2-5.アレルギーを抑制する効果
リンゴポリフェノールには、アレルギーを引き起こす酵素の働きを抑制する効果があります。
アレルギーとは、免疫反応が特定の刺激に対して過剰に起こることをいいます。リンゴポリフェノールには、この過剰反応を抑制する効果があることが、実験の結果から明らかとなっています。
1-2-6.ダイエット効果
リンゴポリフェノールには、脂肪を分解する酵素であるリパーゼの活性を抑制する働きがあるため、食事で摂取した脂肪分が小腸から吸収されることを防ぎ、排泄する働きがあります。また、肝臓にある脂肪を合成する脂肪酸合成酵素の働きを抑制し、脂肪をエネルギー源として燃やす酵素を活性化させる働きがあります。
このことから、リンゴポリフェノールはダイエットに効果的な成分であるといえます。
1-2-7.コレステロール値を下げる効果
リンゴポリフェノールには、脂肪の吸収を阻害するだけでなく、コレステロール値を下げる効果があるとされています。
臨床試験では、りんごポリフェノール600mgを摂取した後、食事を行ったヒトの血液を検査すると血中のコレステロール値や中性脂肪値が約20%下がったという報告もあります。
1-2-8.老化を防ぐ効果
リンゴポリフェノールには、長寿遺伝子を活性化させて寿命をのばす作用があると報告されています。長寿遺伝子を活性化する効果でよく知られている、レスベラトロールと似た働きを持っています。
コラム:リンゴポリフェノールは食事前の摂取が効果的
リンゴポリフェノールは、脂肪の吸収を抑制する効果があるため、食事前に摂取することが効果的です。
食事前に摂取することで、脂肪を分解する酵素リパーゼの活性を抑制し、小腸からの吸収を防ぎます。また、りんごにはペクチンという多糖類が含まれており、人間の体内では食物繊維として機能し、脂肪の吸収を阻害し、コレステロールの排泄を促進する働きもあります。
リンゴポリフェノールの健康機能性とその活用
リンゴポリフェノールの抗酸化作用
2.りんごの食べ方と皮の利点
りんごを食べるときは切り分けて皮を切って食べていることがほとんどかと思います。しかし、先ほど紹介したリンゴポリフェノールを摂りたい場合は皮ごと食べる必要があります。
2-1. りんごは皮ごと食べる
先ほど述べたようにりんごの健康効果を得るためには皮ごと食べる必要があります。これは、リンゴポリフェノールはりんごの皮に含まれているからです。
ただリンゴをおいしく食べたいのならば、皮をむいて食べるだけでよいですが、健康効果を得たい人は皮ごと食べるようにしましょう。
また、りんごを食べるタイミングとして朝・昼・夜に分けて食べるのが正しい食べ方といえます。それは、リンゴポリフェノールは体内での持続力があまりないのでこまめに分けて食べるのが良いといわれます。
コラム:皮ごと食べても大丈夫なの?
皮ごと食べるといっても農薬は大丈夫なのかと心配になっている人もいるかと思います。実際に福岡市が調べた結果では基本的に皮から残留農薬が検出されたという結果となりましたが、健康を損なう恐れがないという濃度であったため、問題なく食べることが可能です。
農薬がどうしても気になる方は、基本的に流水で洗えばほとんど問題ないですが、野菜用洗剤で洗うか、1リットルあたり大匙4杯ほどの重曹を入れた重曹水でスポンジでこすり洗いすることで農薬を落とすことができます。
2-2. ジュースと実の違いと選択肢
りんごを毎日食べるのは大変だからジュースでなんとか代用できないかなと感じている人は少なくないでしょう。実際に毎日りんごを切って食べてよりジュースで飲んだ方がはるかに楽なのは確かです。
まずはりんごの実とジュースでの違いを紹介します。
まず、以下はりんごジュース100g当たりの成分の含有量です。
栄養成分 |
含有量 |
カロリー |
47kcal |
たんぱく質 |
0.2g |
脂質 |
0.1g |
炭水化物 |
11.8g |
ビタミンA |
0μg |
ビタミンC |
3mg |
ビタミンD |
0μg |
ビタミンE |
0.1mg |
カリウム |
77mg |
マグネシウム |
3mg |
食物繊維 |
※Trg |
※Tr:栄養素の含有量が最小記載量の1/10以上かつ5/10未満という意味です。
栄養素については同一のものが当たり前ですが含まれていますが、その含有量については実を食べるときよりも少なくなっており、特に食物繊維についてはほとんど含まれない状態となっています。リンゴポリフェノールについても含まれていると思われますが、リンゴジュースには皮などの搾りかすは含まれていないためやはり、実をそのまま食べるときよりも少なくなっています。
そのため、健康効果を期待してりんごを摂ろうとしている人はりんごの実を食べる方がよいでしょう。
また、よく野菜や果汁のジュースである濃縮還元についてですが。果汁を濃縮保存し、容器に詰める段階で希釈して元の果汁の濃さに戻すことを「濃縮還元」といいます。つまりもとは濃い液体だったものを戻しているので普通のストレートのジュースと同じになります。
3.りんごの糖質と血糖値
今まで説明したりんごの健康効果を得ようと考えているひとで血糖値を気にしているひとがいたら注意が必要です。そのためりんごと血糖値について説明していきます。
3-1. りんごに含まれる糖質
りんごなどの果物に含まれる炭水化物は、ほとんどがグルコース(ブドウ糖)と同じ単糖で、体内への吸収(血中への放出)が早いという特徴があります。
そのため食べ過ぎると血糖の上昇や血中の中性脂肪の増加をまねく場合があるので、糖尿病患者にとっては注意が必要とされているのです。
3-2. りんごの血糖への影響
先ほど述べたように果物に含まれるのは果糖であり、体内に吸収されやすい糖質なので血糖の上昇を招く恐れがありますが、りんごには水溶性と不溶性の両方の食物繊維が含まれており、そのうちペクチンと呼ばれる水溶性の食物繊維が多く含まれています。
水溶性の食物繊維は水に溶けるとゼリー状になり、食べ物にまとわりつくことで糖の吸収を抑えて血糖値の上昇を抑えてくれます。炭水化物を摂取後の血糖値の変化を調べたところ、りんごをよく食べる人は血糖値が上がりにくいという研究結果もあります。
結論からいうとりんごは適正量を守って食べていれば、それほど心配することはありません。むしろ果物を日常的に摂取していると糖尿病のリスクが低下することが、多くの研究で明らかになっています。
4.りんごと血圧の関係
りんごには様々な健康効果がありますが。その中には血圧に関係するものがあります。
4-1. りんごのカリウムで血圧を改善
りんごに含まれているカリウムは血圧の上昇を抑える作用があります。これはカリウムが体内の余分なナトリウムの排出を促す働きがあり、腎臓でのナトリウムの再吸収を抑制して、尿中への排泄を促進するため、血圧を下げる効果があるためです。
りんごには豊富にカリウムが含まれているため、食生活の中にりんごを加えることで、高血圧にともなう脳卒中の予防にもなります。
カリウムは肉、野菜にも含まれていますが、調理をすることで塩分を含んでしましますが、りんごならばそのまま食べることができて塩分を摂取することがありません。カリウム不足を補うのに適しているでしょう。
4-2. りんごで動脈硬化を予防
動脈硬化の要因となるコレステロールの多い食事を摂る時にりんごを一緒に食べると、食物繊維(ペクチン)が余分なコレステロールを体外に排出してくれます。1ヶ月間、毎日りんごを食べ続けると動脈硬化の原因である酸化LDLが大幅に減少したという研究結果もあります。食物繊維は皮の部分に多く含まれているので、皮ごと食べましょう。動脈硬化の予防になります
5.りんごの保存方法
- 新聞紙またはキッチンペーパーでりんごをひとつずつ包む
- りんごを袋に入れて保存する
- 冷暗所または野菜室に保存する
水分の蒸発を防ぐため、りんごを新聞紙またはキッチンペーパーで包みます。
常温保存の場合は、完全に密閉するとりんごから蒸発した水分によってカビが発生する恐れがあるので、風通しのよい紙袋やかごに入れて保存しましょう。
冷蔵庫で保存する場合、りんごから発生するエチレンガスが他の野菜や果物の傷みを早める恐れがあるため、りんごを新聞紙やキッチンペーパーで包んだあとに、ポリ袋に入れてから保存してください。
秋や冬の涼しい季節は冷暗所で常温保存、春や夏の暖かい季節は冷蔵庫の野菜室で保存しましょう。
6.まとめ
りんごは栄養が豊富で1日1つ食べることで医者が要らないということわざが世界であるほど健康効果に優れたくだものです。その健康効果の要因となっているものはりんごの皮にふくまれているリンゴポリフェノールのおかげです。リンゴポリフェノールは様々な健康効果をもたらしてくれるので、ジュースや皮をむいて食べるのではなく、皮ごと食べるようにしましょう。