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「鰻と梅干を一緒に食べない方がいい」ってウソ?ホント?
→ウソ(信頼性★★★★★):鰻と梅干しは一緒に食べても問題ありません! 成分的にも医学的にも、組み合わせて問題となる栄養素は見当たりません。1997年の日本農村生活研究会においても鰻の蒲焼と梅干しを一緒に食べてはいけないは迷信と書かれていまし(1)。そのため、鰻と梅干しを一緒に食べても健康上の被害が出ることはないと思われます。
1.「鰻と梅干しはNG」はなぜ広まったか
1-1. うなぎを食べすぎないようにするため
梅干には消化を促し食欲増進させる効果があるため、それにより、うなぎを食べ過ぎないよう仕向けたいとの考えから、そのような言い伝えが生まれた可能性があるそうです。これは、単に鰻の食べ過ぎが身体に良くない(後ほど言及します)という考えの他に、昔から高級品とされていたうなぎを食べ過ぎるのは家計に良くない、という贅沢を避けようとする考えもあった可能性もあります。
1-2. 胃に負担がかかり消化不良になると考えられた
梅干しの酸味とうなぎの脂っこさが刺激し合い、胃に負担をかけたり、消化不良を起こして下痢などをしてしまうという考えもあったようです。実際にはそのような作用はありません。
2. 栄養的に見れば「一緒に食べた方がいい」
実は「鰻と梅干」の食べ合わせは、栄養的・医学的に問題はありません。実は理にかなった相性の良い組み合わせなんです。鰻に含まれる栄養素は、ビタミンA、B群、D、E、ミネラル(鉄、亜鉛、カルシウム)など、疲労回復にも効果が期待できます。
一方、梅干の栄養素では、酸っぱさのもとであるクエン酸がよく知られています。疲れの原因となる乳酸を分解する作用があり、こちらも疲労回復によい食材です。
さらに、クエン酸はビタミンB群といっしょに摂ることでエネルギーの代謝効率をあげることができます。
つまり、梅干と鰻の組み合わせはマイナスではなくプラスに働く組み合わせの可能性があります。
3. 鰻の食べ過ぎには注意
3-1. 鰻の食べ過ぎはビタミンA過剰に注意
鰻と梅干の食べ合わせには問題ありませんが、鰻の食べ過ぎには注意しましょう。鰻にはビタミンAを多く含有するため、多量に長期間摂取した場合、ビタミンAの過剰を引き起こし、頭痛などの症状が出現する可能性があります(2)。ビタミンAの過剰症は古くから知られており、ビタミンAが大量に含まれるシロクマやサ メなどの肝臓を摂取することで過剰の症状がでたとの報告もあります(3)。
3-2. うなぎ1枚には大体2250〜3000μgのビタミンAが含まれる
日本人の食事摂取基準によると、1日のビタミンAの上限は成人で2700μgとなっています (4)。大きさにもよりますが、うなぎ1枚には大体2250〜3000μgのビタミンAが含まれています(5)。そのため、1日にうなぎ1枚程度であれば、過剰になる問題はないといえるでしょう。
4. まとめ
鰻の蒲焼と梅干しを一緒に食べてはいけないという言い伝えがありますが迷信です。成分的にも医学的にも、組み合わせて問題となる栄養素は見当たりません。一方、鰻をたくさん食べることはビタミンAの摂りすぎになる可能性はあります。高級品ですし、1日にうなぎ1枚程度を食べるのかおススメです。
1.石川寛子. (1977). 食慣行と 「合食の禁」 その 1.
2. 久保和弘. (2009). 食い合わせに関する調査. 紀要, 40, 63-693.2.
3. 橋詰直孝. (1990). 最近のビタミン A 過剰症. ビタミン, 64(7), 411-412.
4. 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
5. 日本食品標準成分表