アカシアの樹Q&Aシリーズ ~健康に関する「ウワサの真相」~
世の中にある健康に関する様々な「噂」。みなさまも何が本当で何が嘘なのか不安に感じたご経験があるのではないでしょうか。健康情報に限らずインターネットの発達した現代では常に大量の情報に溢れています。この情報化された現代を生きる私たちはいかに情報に振り回されることなく、正しい情報を自分に有益なものにするかが大切です。アカシアの樹でもお客様に有益な情報は何か、どうすれば正しい情報を伝えられるか常に考えております。今回からこの記事では巷にある健康に関する噂話を研究や科学的根拠に基づいた情報から検証していきます。
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コーヒーの健康に関するウワサの真相
コーヒーは全世界で広く愛飲されており、3大嗜好飲料の一つにも挙げられます。(所説ありますが、3大嗜好飲料としてはコーヒー、紅茶、ココアが挙げられています)コーヒーを知らないという方はいないと思います。表1にはコーヒー1杯(150 ml)あたりの栄養成分を示してあります。コーヒー豆を挽いて 抽出し、砂糖やクリームの入っていない、いわゆるブラックコーヒーとしての栄養成分です。表からもわかるように取り立てて栄養価に優れているという飲み物ではありません。それではコーヒーの「ヒトの健康」に関わる成分とは何でしょうか?よくあるウワサと共に検証しその真相を追求してみましょう。
成分名 | 1杯あたり | 単位 | |
一般成分 | エネルギー | 6 | kcal |
タンパク質 | 0.3 | g | |
炭水化物(糖質) | 1 | g | |
水分 | 147.9 | g | |
無機質 | ナトリウム | 2 | mg |
カリウム | 3 | mg | |
マグネシウム | 9 | mg | |
リン | 11 | mg | |
マンガン | 0.05 | mg | |
ビタミン類 | ビタミンB2 | 0.02 | mg |
ナイアシン | 1.2 | mg | |
ビオチン | 2.6 | µg | |
表1 コーヒー栄養成分 文部科学省の食品成分表よりコーヒー1杯(150 ml)あたりの成分 |
1.「コーヒーを飲むと集中力が高まる」って、ウソ?ホント?
ホント:コーヒーにはカフェインが含まれます。カフェインは神経物質と類似した構造があり、目を覚ます作用があります。このカフェインの覚醒作用により、コーヒーを飲むことによって集中力が高まるという研究が報告されています(信頼性★★★★☆)。
コーヒーがヒトの身体における影響を与える最も大きな要因がカフェインです。そのためコーヒーの中でもカフェインに関するものが最も多く研究されています。コーヒーに含まれるカフェインはアルカロイドに属する化学物質(図1)で、苦みを持ち、もともとは植物が昆虫に食べられないようにするために作られた物質のひとつと考えられており、実際に農業上の防虫剤として可能性が研究されています(1,2)。
図1カフェインとアデノシンの化学構造式 |
カフェインという化学物質には覚醒効果、利尿作用、代謝促進などの効果があります。これはカフェインの化学構造がアデノシンという神経物質と類似していることに由来します(図1)。アデノシンはアデノシン受容体と結合し睡眠を誘発します。一方、カフェインはアデノシンが受容体と結合することを阻害し、睡眠効果は抑制され、覚醒効果を発揮します(図2)、(3)。
図 2 カフェインの覚醒作用メカニズム |
コーヒーの集中力に関する研究にはフランスで行われた夜間運転の研究があります。
この研究では、高速道路を夜間運転するドライバーを対象に ①カフェイン入りのコーヒー、② カフェインレスコーヒー、③ 仮眠30分、の3グループに分けビデオ録画による道路のライン越えの回数を計測し、運転中にラインを踏んだ回数から集中力を評価しました。その結果、カフェイン200㎎の摂取でラインを踏む回数は、仮眠30分、カフェインレスを摂取した時より有意に少なく、コーヒーを飲むことによって集中力が高まる効果があったことを報告しています(4)
しかし、当然ながらカフェインの覚醒効果にも限度があり、コーヒーを飲み続ければ休みなしで動き続けるということはありません。一般的には成人男性では通常コーヒー一杯分のカフェインで覚醒効果は十分で摂取15-30分後くらいから始まり数時間持続するといわれています(3)。
- Nathanson JA. Caffeine and related methylxanthines: possible naturally occurring pesticides. Science. 226:184-187 (1984).
- Hollingsworth RG, Armstrong JW, Campbell E. Caffeine as a repellent for slugs and snails. Nature. 417:915-916 (2002).
- Fredholm BB, Bättig K, Holmén J, Nehlig A, Zvartau EE. Actions of caffeine in the brain with special reference to factors that contribute to its widespread use. Pharmacol Rev. 51:83-133 (1999).
- Philip P, Taillard J, Moore N, Delord S, Valtat C, Sagaspe P, Bioulac B. The effects of coffee and napping on nighttime highway driving: a randomized trial. Ann Intern Med. 144:785-791 (2006).
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