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辛い料理は食欲を増進するはウソ?ホント?
→ホント(信頼性★☆☆☆☆):香辛料やハーブは、食欲を増進させる食材として経験的に使用されてきました。しかし、実際のヒトの食欲とカプサイシンなどの辛味成分との研究は少なく科学的根拠は示されていないのが現状です。
第20回 辛い料理やカプサイシンの健康効果に関するウワサの真相
1.辛い料理に期待する効果は「食欲増進」
2023年、株式会社ファンくるでは「辛い料理について」アンケートを実施しており、辛い料理が好きと答えた人は82%になりました。その中で辛料理に期待する効果としては32%の方が「食欲増進」をあげていました。この結果からも多くの人が辛い食べ物から食欲増進を連想していることがうかがえます。株式会社ファンくる「辛い料理について」アンケート調査
2. 辛さの正体はカプサイシン
辛い料理を想像してまず頭に浮かぶのは唐辛子です(1)。唐辛子の主成分はカプサイシンといい、これを含んだ料理を食べると、舌の感覚神経が刺激されて辛みを感じます。そして体の中に取り込まれると、体が熱くなったり汗が出たりします。このカプサイシンは加熱しても壊れにくい成分なので、辛くて熱い料理に好んで使われるわけです。
3. カプサイシンの分子メカニズム
カプサイシンはTRPV1(transient receptor potential vanilloid 1)というレセプタータンパク質に結合します。活性化しTRPV1は知覚神経を刺激し、だ液の分泌や胃液の分泌の調節に関与します(2)。このようにカプサイシンは胃を適度に刺激し、胃液や唾液の分泌を活発にすることで食欲増進につながると考えられます。
しかしこのあたりのメカニズムを詳細に解析した研究は多くありません。あまりにも古くから知られている現象として詳しい研究はされてこなかったのかもしれませんね。
4.とうがらしや辛い食べ物がヒトの健康に対する影響は未だエビデンスは不十分
2022 年、中国の研究者は、とうがらしや辛い食べ物がヒトの健康に対する影響を評価するため、統合的にレビューする調査を実施しました(3, 4)。この研究では11 本の システマティックレビューとメタアナリシスをレビューし、とうがらしや辛い食べ物が血圧、エネルギー消費量、肥満、血糖、インスリン、胃食道逆流症などと関係があるかを調べています。その結果いくつかの健康効果と相関はあったものの、エビデンスは不十分であると結論づけられています。この論文の著者からも今後質の高い研究の実施が期待されているとコメントが寄せられました。
5. まとめ
食欲を増進させる食材として経験的に使用されてきましたが、実際のヒトの食欲とカプサイシンなどの辛味成分との研究は少なく科学的根拠は示されていないと考えられます。
唐辛子が刺激物であることに変わりはありません。食べ過ぎは胃腸の粘膜を荒らすことにつながりますので、多量の摂取は控えるようにしましょう。
2. 富永真琴. (2006). 消化管における TRPV1 の発現と機能. 日本薬理学雑誌, 128(2), 78-81.
4. オルトメディコ Industry news topics 2024.2