目次
1.食事の後に眠くなるのはなぜ?
食事でしっかり満腹した後、体がだるくなって、「ウトウト」と眠くなることはありませんか?多少の眠気は生理現象のひとつと考えられますが、実はそれが体のSОS信号ということもありうるのです。
1-1.ある程度の眠気は自然な生理現象ともいえる
食事の後に眠くなる理由として、一般的に考えられているのが脳の血流量の変化です。脳が活発に働くには大量の血液の流入が必要で、その量は1分間で800mlほど。これは同じく1分間で心臓が全身に送り込む血流量の1/5~1/6にも相当します。ただし、食事をした後は、食べものの消化吸収を担う胃腸に血液が多く流れ込むようになります。その結果、脳の活動に必要な血液の流入が一時的に少なくなり、脳が休息モードにおちいって眠くなるのです。また、食べものを消化吸収するときは、心身をリラックス状態に整える副交感神経が働くために、ますます眠気をおぼえやすくなるといえます。このようにして起きる眠気は、誰にでも起きる自然な生理現象であり、ことさら心配する必要はありません。
1-2.強い眠気が長時間続くときは血糖値スパイクが原因?
一方で注意すべきなのは、食事の後、我慢できないほどの強い眠気が長く続くケースです。血糖値の乱高下である「血糖値スパイク」が、その背景に潜んでいる可能性があるためです。私たちが食事で摂った糖質は腸内で分解・吸収されて、ブドウ糖となって血液中に流れ込みます。この血液中のブドウ糖の濃度のことを血糖値といいます。食事の後、高くなった血糖値を下げるのが、すい臓から分泌されるインスリンというホルモンです。インスリンは血糖を筋肉や脂肪細胞に運び込むことで血糖値を下げます。このような血糖値の上昇と下降は、通常はゆるやかなペースで推移するもの。しかし、糖質が多い食事を大食い・早食いした場合、気になる問題が生じることがあります。まず、大量の糖質を短時間で摂ると、ブドウ糖が血液中に多くあふれて血糖値が急激に上昇(140mg/dl以上)。それを察知したすい臓はインスリンをせっせと分泌して、あふれた血糖の運搬を猛スピードで行わせます。その結果、今度は血糖値が急降下するのです。このように食後の血糖値が急上昇・急降下する現象を血糖値スパイクと呼びます。血糖値スパイクが起きて、血糖値が一気に下がって低血糖状態におちいると、結果的に脳に届けられる血糖が大幅に減ることになります。血糖は脳の唯一のエネルギー源ですから、それが不足すると脳細胞の活動が低下して、強烈な眠気に襲われることに。さらに、集中力が湧かなくなる、体がだるくなるといった変調も現れるのです。
2.健康診断で注意されることも?食後の猛烈な眠気を放っておくとこれが危険
食後の自然な眠気とは異なる、強い眠気をもたらす血糖値スパイクを放っておくと、体に気がかりな事態も起こりえます。
2-1.血管の大敵となる活性酸素が増えてしまう!
血糖値スパイクが日常的に繰り返されると、血管の内壁の細胞に活性酸素が多く発生することが報告されています。細胞を酸化させる(サビつかせて老化させる)活性酸素が増えると、血管のしなやかな弾力が徐々に衰えて、血液の流れにもよくない影響が現れることに。特に脳や心臓の血管の酸化が進むと心配です。
2-2.インスリンの分泌力が低下して血糖コントロールが不安に
血糖値が急激に増えると、すい臓はそのつどインスリンを大量かつ一気に分泌しなくてはなりません。その結果、すい臓がオーバーワークとなって疲労がため込まれると、肝心のインスリンの分泌力が徐々に低下。すると、血糖値をスムーズに下げることが難しくなり、健康診断などで血糖コントロールを注意されることになりかねません。
2-3.血糖値スパイクのセルフチェックをしてみよう
食事をすると決まって猛烈に眠くなるけれど、これが血糖値スパイクのサインなのかどうか?気になる人はセルフチェックを実践してみましょう。食後の眠気に加えて、以下の項目に当てはまるものが多いほど血糖値スパイクのリスクが高まります。
【セルフチェックリスト】
□朝食を食べずに、昼に大食いをすることが多い
□食事をよく噛まず、早食いをするクセがある
□丼物、麺類など糖質の多い単品メニューをよく食べる
□食事をサンドイッチや菓子パンだけで済ませることが多い
□外食することが多い
□野菜、海藻、キノコ類はあまり食べない
□甘いお菓子が好き
□甘いジュースや清涼飲料水をよく飲む
□食事の時間が不規則である
□運動をする習慣がない
3.食後に眠くなりやすい食べもの・眠くなりにくい食べものとは?
たくさんの糖質を短時間で摂る→血糖値スパイクが起きて血糖値が急下降する→脳が低血糖状態におちいって眠くなる。これが食後に猛烈に眠くなってしまうメカニズムです。そこで、食後の眠気を防ぐためには、まず糖質を多く含む食品を控えて、糖質が少ない食品を努めて食べることがポイントになります。
3-1.食後に眠くなりやすい糖質が多い食品はこれ!
ご飯、パン、麺類など主食となる食品には、いずれも糖質が多く含まれており、食べ過ぎると食後に強い眠気をおぼえることに。ご飯は1杯までにしておかわりは控えたり、単品メニューの大盛り、特盛りなども避けるようにしたいものです。おやつどきに食べるお菓子もうっかりすると糖質の摂取オーバーとなり、眠気を誘う一因となります。
【主な主食メニューの糖質量】
白米のご飯(茶碗1杯) 55.2g
カレーライス 108g
チャーハン 76.8g
食パン(6枚切り1枚) 26.6g
かけうどん 58.5g
かけそば 47.3g
しょう油ラーメン 60.1g
ミートソーススパゲティ 86.2g
【主なおやつ類の糖質量】
ショートケーキ(1個100g) 43.0g
シュークリーム(1個60g) 15.2g
カステラ(1切れ50g) 31.3g
どら焼き(1個100g) 55.6g
ようかん(1切れ50g) 33.5g
あんパン(1個80g) 41.0g
ミルクチョコレート(1食40g) 20.8g
3-2.食後に眠くなりにくい糖質が少なめの食品はこれ!
糖質が少なめの食品は血糖値スパイクを起こしにくいことから、食後の眠気を防ぐためにおすすめです。主食を控えるかわりに、おかずの肉、魚などを多めに食べれば空腹感に悩むこともありません。野菜の中では、一般に葉物野菜の糖質量が少なめです。おやつにはやはり糖質が少ない肉の加工食品、ゆで卵、チーズ、無糖のヨーグルト、ナッツなどを選ぶようにしましょう。
【主な肉類、魚類、野菜類の糖質量】
牛肉、豚肉、鶏肉(100g) 0~0.6g
ロースハム(20g) 0.3g
ウインナーソーセージ(10g) 0.3g
ベーコン(40g) 0.1g
鶏のから揚げ(100g) 14.3g
一般的な魚類の肉(マグロ、アジ、サンマ、サバ、タイなど100g) 0~0.6g
イワシ缶詰(油漬け1缶70g) 0.2g
シラス干し(15g) 0.1g
葉物野菜(キャベツ、小松菜、ホウレン草、白菜、レタス、ネギなど100g) 0.3~5.8g
キノコ(生のシイタケ、エノキタケ、シメジ、エリンギなど100g) 1.3~3.7g
【おやつに向いている主な食品の糖質量】
鶏卵 0.2g
プロセスチーズ(20g) 0.3g
カマンベールチーズ(100g) 0.9g
無糖ヨーグルト(100g) 4.9g
クルミ(煎り10g) 0.4g
アーモンド(フライ味つけ10g) 1.0g
カシューナッツ(フライ味つけ10g) 2.0g
4.食後の眠気を抑えるには食べ方の工夫もポイント
食後の眠気を抑えるには、糖質の摂取量を減らすのが大切なのはわかったけれど、主食はなるべくしっかり食べたい。そんな方は血糖値の上がり方をゆるやかにする以下の工夫を実践してみましょう。
4-1.食事はよく噛んでゆっくり食べる
食べものが胃に入って消化吸収が始まり、脳の満腹中枢が刺激されるまでには15分ほどかかるといわれています。すなわち、あわただしく早食いをしてこの時間以内に食事を終えると、食事量は足りていても満腹感をおぼえにくいのです。そうしてついご飯のおかわりをすると、糖質の摂取量は倍増することになります。反対に食事をよく噛んで30分以上かけて食べるようにすれば、適正な糖質の摂取量で満腹感が得られますし、血糖値もゆるやかに上がっていくことに。そうなれば当然、血糖値スパイクによる食後の眠気を抑えることにつながります。
4-2.主食より先に食物繊維が豊富なサラダなどを食べる
糖質が多い主食よりも先に、野菜、海藻、キノコなどを中心にした料理を食べることも食後の眠気予防におすすめです。こうした食品に豊富な食物繊維には、腸内での糖質の吸収をゆるやかにして、血糖値の上昇を遅らせる作用があります。食事全体の糖質量は変えなくても、先に食物繊維を摂っておけば、血糖値スパイクがより起きにくくなるというわけです。特に丼もののご飯や麺類など単品メニューを食べるときは、サラダやお浸しなどを1品添えて、こちらを先に食べるようにしましょう。
4-3.油や酢を上手に活用する
油や酢には一緒に食べたものの消化吸収を遅らせる作用があり、必然的に食後の血糖値の上がり方もゆるやかになるというメリットがあります。油の摂り過ぎはカロリーオーバーが気になるところですが、調理に使う油の量の目安は1日小さじ5杯(20g)といわれており、その範囲内ならさほど心配しなくても大丈夫。オリーブオイル、ゴマ油、バター、生クリームなどを適宜用いれば、料理の風味アップにもつながります。
5.まとめ
食後に猛烈に眠くなったからといって、仕事や家事を中断して休むことはなかなかできないもの。また、眠気の原因となる血糖値スパイクを放っておくと、健康診断で要注意とされる可能性もあります。眠気を誘うような食事の内容や食べ方を見直して、心身ともにスッキリさわやかに過ごしましょう。