あなたは普段よく眠れているでしょうか?厚生労働省の調査では94%の人が不満があると回答しており、ほとんどの人は睡眠で何かしらの問題を抱えています。この不満があるというのは理由は様々ですが、何度か目が覚める、なかなか寝付けない等の眠れない等の症状は睡眠障害と呼ばれています。
睡眠障害とは夜寝つきが悪い、眠りを維持できない、朝早く目が覚める、眠りが浅く十分眠った感じがしないなどの症状が続き、よく眠れないため日中の眠気、注意力の散漫、疲れや種々の体調不良が起こる状態を指します。
日本においては約5人に1人が、このような不眠の症状で悩んでいるとされています。不眠症は、小児期や青年期にはまれですが、20~30歳代に始まり加齢とともに増加し、中年、老年と急激に増加します。
睡眠障害の原因は様々ですが、今回はストレスが原因での睡眠障害について解説していきます。
1.ストレスで眠れない原因
眠りにつくときは、自律神経の中で体をリラックスさせる作用のある副交感神経が優位になります。しかし、ストレスがあると、人が緊張するときに優位になる交感神経が活発になります。そのため、眠れない症状が出現します。一旦、寝付いても眠りが浅くなり、途中で起きてしまうということが起きます。
また、睡眠障害でもその種類はいくつかあります。
〇入眠困難(ベッドに入ってもすぐに眠れない)
床についてもなかなか(30分~1時間以上)眠りにつけない。
〇中途覚醒(途中で何度も目が覚める)
いったん眠りについても、翌朝起床するまでの間、夜中に何度も目が覚める。
〇早朝覚醒(朝早く目が覚める)
希望する時刻、あるいは通常の2時間以上前に目が覚め、その後眠れない。
〇熟睡感がない
眠りが浅く、睡眠時間のわりに熟睡した感じが得られない。
眠れない状態が続いてしまうと以下のような症状が出てくる可能性があります。
- 消化器の症状:胃が痛い、下痢、吐き気、体重減少、食欲低下
- 循環器の症状:血圧が高くなる、動悸がある、胸が苦しい
- 身体症状 :頭痛、寝汗、発熱、ほてり、耳鳴り、めまい、頻尿
- 精神症状 :うつ、疲労感
このように眠れない状態が続くことで体に異常が出てきてしまい、さらにストレスが貯まってしまうという負のループになりかねないかもしれないため、早急に対処することが必要となります。
2.ストレスで眠れないときの対処方
眠れないときは睡眠外来を一度受診して適切な処理をしてもらうことが一番ですが、原因がストレスと分かっているのならストレスを解消するための行動をしてはいかがでしょうか。
ストレスは脳と体がリラックスすることで解消できます。そしてそれが不眠の解消にもつながります。寝る前にリラックスできるよう自分の時間を意識的につくりましょう。また、睡眠をとるために快適な環境と、体を睡眠のために整えることも重要となってくるのでそちらも併せて紹介していきます。
2-1.リラックスしてストレスを解消する方法
ストレスが原因で眠れないときは交感神経が優位になって興奮状態のため、リラックスすることで副交感神経を優位にして落ち着くことが効果的です。そのために就寝に向けてのリラックスのための方法を紹介していきます。
2-1-1.就寝1~2時間前にリラックスできる時間をつくる
音楽鑑賞は脳波をα波に変え、リラックス状態にする効果があります。読書は集中している状態だと6分間でストレス解消できると言われています。お気に入りのアロマをたき、香りにより脳の興奮を鎮めリラックスするのも効果的です。
その他、リラックス効果のあるハーブティーや、ポリフェノールなど精神安定作用があるホットココア、消化吸収がよいホットミルクを寝る30分前くらいに飲むのもおすすめです。
また、無理に眠ろうとすると、かえって寝つきが悪くなってしまうことも。そのときの眠気に応じ、眠くなってからベッドに入るといいでしょう。
2-1-2.友人、知人と話をする
一人で悩んだり考え込むことが一番よくありません。気の置けない親しい友人や同じ境遇の人たちと話をすることでも、ストレスを発散し、不安を解消することができます。
2-1-3.ゆっくりとお風呂に入り体を温める
入浴は家で簡単にできるストレス解消方法です。リッラクス効果を得るためには38~40℃のぬるめのお湯にゆっくりと浸かりましょう。体が温まり全身の血の巡りが良くなると筋肉の緊張がほぐれて副交感神経が優位になり、大きなリラックス効果があります。
また、入浴後は、必要以上に体を冷やさずベッドに入り、スムーズな入眠につなげましょう。
また、冷え性など日常的に手足が冷たい方は血行不良により脳も体も休まらず、入眠しづらい状態。就寝前に足湯や手湯でリラックスしながら体を温めたり、靴下をはくなど手足を冷やさない工夫をしましょう。
2-1-4.リラックスを促す呼吸法
鼻からゆっくりと息を吸い、口か鼻からゆっくりと息を吐く呼吸法もストレス解消に効果的だと言われています。ストレス過多な状況では、人は呼吸が浅くなり、脳も身体も酸素不足になりがち。その結果、ますます緊張が高まってしまいます。特に、全身に酸素を届けるためにも深呼吸は重要です。目を閉じて大きく深呼吸を行うと、副交感神経の働きを強め、意識的にリラックスできます。
2-1-5.リラックスのツボを押す
不眠の改善やリラックスに効果的なツボを刺激することで入眠を促します。足裏にある失眠(しつみん)や湧泉(ゆうせん)、頭頂部の百会(ひゃくえ)、耳と首の間にある安眠(あんみん)などのツボは、リラックス効果も期待できます
2-2.ストレスに備える
仕事や人間関係などストレスの原因を排除することは簡単ではありません。そのためにもストレスの要因となることに対して備えることや、吐き出すことで感じるストレスを軽減することが必要となります。
2-2-1.不安の原因に対して備える
不眠の原因がはっきりしている場合は、不安の原因に対して備えることで不安感をなくし、ストレスを解消できることがあります。不安感が強いと行動力が鈍り、余計に何もできなくなり、就寝前に不安や恐怖が沸き上がってきてしまうことに。小さな備えでも、安心感を得ることができれば、ストレスの元となっている恐怖感を解消し、穏やかな気持ちで入眠できるでしょう。
2-2-2.感情を紙に書き出して気持ちを整理する
不安やストレスの原因を言葉にして紙などに書き出すのも良い方法です。客観的に頭の中が整理され、気持ちが鎮まることがあります。ストレスの対象やストレスを感じている自分自身から距離を置くことも大切です。
3.睡眠の質を上げるための方法
ストレスで眠れない場合はストレスの解消が第一に必要ですが。よい睡眠をとるためには睡眠の質を上げることが重要となってきています。例えば寝る前にコーヒーを飲むと目が冴えてしまった等の睡眠を妨げる行動をしてしまうと、せっかくリラックスして睡眠に備えていても意味がなくなってしまいます。そうならないためにも睡眠の質を上げるための行動を知っておきましょう。
3-1.睡眠のために体を整える
しっかりとした睡眠をとるためには体の準備を整えることが大切になります。
3-1-1.朝、太陽光を浴びる
眠る時間は体内時計によって決まります。朝、光を浴びると、目から入った光を脳が感じることでメラトニンの分泌が止まり、体内時計がリセットされて活動を始めます。それから14~16時間くらい経過すると、体内時計からの指令により徐々にメラトニンが分泌され始め、入眠に備え眠気を感じるようになります。
体内時計のリズムを正しくするには、朝、太陽光をしっかりと浴びること。朝が苦手な方は窓際にベッドを置きカーテンを開けて眠ると、翌朝太陽光で目覚めやすくなると同時に、睡眠の質を上げることもできます。これは、30~1時間、決まった時間に光を浴びることで本来の睡眠リズムを取り戻す不眠症の治療でも応用されている方法です。
3-1-2.毎朝、同じ時間に起床する
睡眠リズムを整えるため、起床時刻を毎日同じ時間にすることも大切です。睡眠時間を一定にするのではなく、平日・休日関係なく、起床時刻を毎日同じにすることにより、睡眠のリズムを改善します。就寝時刻も同じにできるとベストですが、まずは目覚めの時間から改善していきましょう。
3-1-3.運動を行う
適度な肉体疲労は心地よい眠りを生み出します。体に負担がかからないウォーキング、ジョギングなどの軽い有酸素運動は血行が良くなって眠りやすくなります。特に、日中のウォーキングを習慣にすると自然な入眠を促すことができると言われています。通勤時間などの移動時を利用して1日20分以上歩くとよいでしょう。就寝1時間くらい前なら軽いストレッチやヨガ、ピラティスなどもおすすめです。ただし、激しい運動は交感神経が刺激され、逆に眠れなくなるので注意。
3-1-4.寝酒、寝タバコ、カフェイン飲料を控える
就寝前のコーヒー、紅茶などカフェインを含んだ飲み物、タバコなどの刺激物は安眠の大敵です。また、アルコール類も少量であれば入眠を促すこともありますが、大量に飲むと中途覚醒や熟睡間がなくなってしますので控えましょう。
3-1-5.入眠習慣をつくる
就寝前に決まった行動を習慣づけると睡眠が促されることがわかっています。入浴、歯磨き、ストレッチや柔軟など単純な作業を行うことで、脳に入眠を働きかけることができます。
3-2.睡眠環境を整える
3-2-1.生活空間と寝室を別にする
生活空間と寝室はできる限り分けましょう。寝室に入ると自然と体が睡眠に向かうという環境作りが大切です。部屋を分けるのが難しい場合も、カーテンなどを使い、就寝スペースを区切るなどちょっとした工夫をすると入眠しやすくなります。
また、就寝前のテレビやパソコン、スマホの使用は不眠の要因に。これらの発する光は脳を刺激したり、メラトニンの分泌を抑え、睡眠に悪影響です。ですので、就寝前の2時間前にはテレビを見たりパソコンやスマートフォンを使用するのは控えましょう。
3-2-2.寝る一時間前から部屋の明かりを弱くする
夜になると分泌される、睡眠を促すホルモン「メラトニン」は、照度が高い光を浴びると分泌が抑制されて脳が覚醒し、スムーズな入眠を妨げるので、そのため眠る1時間前には部屋の明かりを弱くして、強い光を浴びないようにしましょう。
また、照明の色も重要になります。 入眠前は白色~青色の寒色系の明かりよりも、オレンジ色に近い暖色系の明かりにする方が気持ち的にも落ち着く効果があります。
3-2-3.室内の温度と湿度を整える
夏は25〜27℃前後、冬は15〜18℃前後、湿度は通年50〜60%が理想と言われています。
入眠時は、深部体温が下がることによって眠気が促されるので、室内温度と湿度に気を配りましょう。温度が低すぎても高すぎても、深部体温が下がらず、寝つきが悪くなり、睡眠中の覚醒が増えるなど、睡眠の質が低下する恐れがあるのでエアコンや加湿器をうまく利用して環境を整えるようにしましょう。
4.まとめ
現代人はほとんどの人が睡眠の悩みを持っています。眠れない、夜中何度も起きるなどの症状は睡眠障害と呼ばれています。睡眠障害の原因は様々ですがストレスもその一因となります。ストレスが原因ならばそのストレスを解消するための行動と睡眠の環境を整えることが重要となります。本当につらいときは睡眠外来に行く必要がありますが、それでも睡眠をとるための環境を整えることと、睡眠のための行動は行う必要があるので、睡眠で悩んでいる人は紹介した方法を実行してみてはいかがでしょうか。