お茶で風邪薬を飲まない方がいい」って、ウソ?ホント?
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ホント(信頼性★★★☆☆):お茶にはカフェインが含まれます。風邪薬にもカフェインを含むものがあり、カフェインの過剰は頭痛、めまいなどの症状を起こすことがあります。注意しましょう。
お茶はもともと薬として遣唐使が持ち帰ったことが知られています(お茶の簡単な歴史は前回のコラムにて)。その効果の目的としてはカフェインの効能が大きいとされています。いわゆる覚醒効果、鎮痛効果、代謝促進などの効果です。夜通し座禅を組む僧侶の眠気覚ましなどにも使われました。
カフェインの薬理的な効果はカフェインの化学構造がアデノシンという神経物質と類似していることに由来します。カフェインがアデノシン受容体と結合することで睡眠効果は抑制され、覚醒効果を発揮します。一方でカフェインは過剰摂取になると頭痛などの症状を起こすことがあります。カフェインの効果やカフェイン中毒についてはコーヒーと健康についての記事でも書いていますので改めてご覧いただければ幸いです。
ではお茶にはどのくらいのカフェインが含まれているのでしょうか
種類100gあたり | カフェイン量 |
玉露 | 160 ㎎ |
コーヒー | 60 ㎎ |
紅茶 | 30 ㎎ |
ウーロン茶 | 20 ㎎ |
煎茶 | 20 ㎎ |
ほうじ茶 | 20 ㎎ |
文部科学省「日本食品標準成分表 2015 年版(七訂)」 |
表にありますように実はお茶のカフェインの量はコーヒーより多いことが知られています。そのため、カフェインを含むような風邪薬を飲む際は、お茶ではなく水やぬるま湯で飲むことをお勧めします(必ず症状が現れるものではありませんが注意しましょう)。
一方で貧血の予防や治療で使われる鉄剤、鉄サプリなどもお茶と一緒に飲むことは良くないという話もよく耳にします。こちらについても解説していきたいと思います。
お茶に含まれるポリフェノールには金属とくっつく性質があります。そのため鉄剤をお茶と飲むと鉄の吸収が阻害されると考えられているようです。たしかに、Hurrellらの論文ではパン食に含まれる鉄分がお茶などのポリフェノールが鉄分の吸収を阻害することを報告しています(1)。しかしこの研究のデータはあくまでパン食に含まれる鉄分の吸収を示しており、鉄剤を使用した時の鉄吸収を阻害したというデータではありません。一般に鉄剤として摂取する鉄分量はパン食でとる鉄分より多く安定です。安井らのラットを用いた研究においても茶系飲料の鉄栄養に及ぼす直接的な影響はきわめて小さいと報告しています(2)。これらの結果から鉄剤をお茶と飲むことにはほとんど問題ないと考えられます。しかし、ポリフェノールと金属がくっつくのは事実ですので、気になるようでしたら鉄剤なども水やぬるま湯で飲む方が良いかもしれません。
【コラム】高級緑茶「玉露」はポリフェノールが少ない?
緑茶には玉露、煎茶、番茶、ほうじ茶などの種類がありお値段もさまざまです。みなさまもきっと玉露には高級なイメージがあると思うのですがその違いは何でしょう?ポリフェノールが多く含まれたりするのでしょうか?
そもそも玉露とは栽培する前に20日間ほど太陽の光をさえぎって新芽を育て丁寧に摘み取った茶葉のことです。この遮光による栽培により茶葉のうま味成分であるグルタミン酸(テアニンも含む)を増やすことができます。グルタミン酸(テアニンも含む)は根で合成され葉に蓄積されます。しかし、日光を受けるとテアニンは渋味成分のポリフェノールであるカテキンへ変化します。
種類 | ポリフェノール(カテキン類) | アミノ酸 |
玉露 | 9-10 mg | 4-6 mg |
煎茶 | 12-13 mg | 2-3 mg |
番茶 | 12.5-13.5 mg | 2-2.5 mg |
ほうじ茶 | 9-10 mg | 0.5-1 mg |
実際に表にありますように玉露や上級煎茶の方がアミノ酸含量は高く、カテキン含量は少なくなります(3)。
煎茶や番茶はどのように作られるのでしょうか。煎茶とは5月の新茶の時期に収穫される1番茶を蒸して仕上げた茶葉です。つまり煎茶とは一番茶のことです。玉露と異なり通常、遮光した栽培は行いません。そして5月以降に摘まれる茶葉を番茶と呼びます。6月中旬に摘み取られるお茶を2番茶、7月下旬を3番茶と呼びます。より強い太陽の光を浴びるため下級番茶の方がカテキンの量は増えます。ポリフェノールを摂る目的であれば番茶の方が良いですね。そして、番茶を加熱して作られるのがほうじ茶。抹茶は玉露のように遮光して育てた茶葉を石臼で挽いて作られます。そのため高アミノ酸、低カテキンとなり意外と渋味は少ない飲み物となります。
2. 安井萌, 小野寺佳奈, 細見亮太, 福永健治, 西山利正, 吉田宗弘. 緑茶系飲料の投与がラットの鉄および亜鉛栄養状態に及ぼす影響. 微量栄養素研究. 27: 60-63 (2010).