お茶うがいがインフルエンザ予防に効果があるって、ウソ?ホント?
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ホント(信頼性★★★☆☆):お茶には含まれるポリフェノールなどはインフルエンザウイルスに直接作用して吸着を抑えます。
インフルエンザは気道など粘膜から侵入し感染します。インフルエンザウイルスは、ウイルス粒子の表面から突き出したタンパク質(スパイクタンパク質)を利用して感染します(図)。お茶には含まれるポリフェノールなどはインフルエンザウイルスに直接作用してスパイクタンパク質の機能を阻害することでウイルスの吸着や遊離を抑えます(1)。
またエピガロカテキンガレートは細胞内小胞の酸性化を抑制することによってウイルスの増殖を阻害するなどの効果があります(2)。小学校児童における緑茶飲用習慣とインフルエンザ疾患の関連をしらべた疫学調査では週6日以上、1日1-5杯のお茶の飲用でインフルエンザの発症が減少することが報告されています(3)そして、この緑茶成分に着目した「緑茶うがい」も予防方法として注目を浴びています。これに関してもいくつか研究があるのでご紹介いたします。Yamadaらの研究では高齢者124人を対象に冬季3か月間茶カテキン抽出物(総カテキン濃度200 µg/ml)で1日3回うがいをした76人(カテキン群)と、水でうがいをした48人(対象)を追跡調査し、インフルエンザの発症を比較した結果、カテキン群は対象群と比較して有意にインフエンザの発症割合が少ないことを明らかとしました(4)
また、このようなお茶の効果はインフルエンザウイルス以外の他のウイルスにも有効であることが知られています。例えば風邪などの原因ウイルスが明確でない場合でもお茶うがいや茶カテキンの摂取が予防に効果があることが複数の論文から報告されています(5)。興味深いことに風邪予防にはお茶の飲用よりうがいの効果の方が研究データとしてそろいつつあるようです(6)。お茶は飲むより舌頭へぽたりと載せて、四方へ散らす方が効果的なのかもしれません。
さらに、最近では新型コロナウイルスにおいてもその効果が期待されています。Ohgitaniらは茶カテキン類がコロナウイルスのスパイクたんぱくに結合し、細胞への感染能力を低下させる効果(7)や、試験管内でヒト唾液中に加えたウイルスに対しても、茶カテキン類による不活化がみられたことを報告しています(8)。しかし、これらの結果は未だ試験管レベルの結果であり、研究の数も少ないのが現状です。いずれにせよ、お茶うがいやお茶の飲用にはワクチン接種など医薬品のような予防効果までは期待できません。しかし、手洗い、うがいなどによる公衆衛生的な予防法に付加的な効果があると理解しましょう。
【コラム】発酵してないのに発酵茶?緑茶、紅茶、ウーロン茶の違いは何?
日本ではお茶といえば緑茶をイメージしますが、世界的にみればお茶(Tea)といえば紅茶を指します。だいたい世界のお茶の7割が紅茶です。では緑茶、紅茶、ウーロン茶の違いは何でしょうか?これらの違いは茶葉の違いではなく製造法の違いに由来します。
図にありますようにお茶の製造法はいわゆる非発酵茶、半発酵茶、発酵茶、後発酵茶に分けられます。みなさまも紅茶は茶葉を発酵させて作ると聞いたことがあるかもしれません。しかし、じつはこの発酵という単語はお茶業界で習慣的に使われている言葉です。厳密にいうと科学的な発酵とは異なります。科学的な意味で言うと発酵とは有機物に微生物が作用し人間が使える形態になることをさします。紅茶を作る時には摘んだ茶葉の水分を飛ばし、揉んだ後、高温多湿な状態でしばらく置いて乾燥させます。ウーロン茶の場合は高温多湿な状態で置いておく期間を短くして途中で反応を止めます。これら高温多湿な状態でしばらく置く反応には水分や酸素による化学反応は起こりますが、微生物の関与する反応はありません。その意味では科学的に意味する発酵とは異なります。
本来の意味での発酵茶というと図の一番下に記載した後発酵茶のみとなります。このお茶の製造過程には微生物による発酵過程が関与します。実はこの製法で作られるお茶は日本にも存在します。富山で作られる富山黒茶、通称バタバタ茶、徳島で作られる阿波晩茶、高知の碁石茶などです。いずれもその地域に伝わる伝統茶として知られ、希少価値の高いお茶です。みなさまも飲む機会があればぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか?
6. 新版 茶の機能 ヒト試験から分かった新たな役割 日本茶業中央会(企画)、衛藤英男(編)、冨田勲(編)、榛村純一(編)、伊勢村護(編)、原征彦(編)、横越英彦(編)、山本万里(編)、前田万里(編)